[本紹介]具体と抽象

せっかく参加者の方々からベスト本を紹介していただいているので、参加者のイチ推し本をこの読書会のホームページでも紹介したいと思います。月に10冊以上読んだ中からのベスト本ということで、読み応え抜群の本ばかりです!

今回は、私自身が以前月間ベスト本にチョイスさせていただいた一冊を紹介したいと思います。有名な本なので、読んだことのある方も多いかも知れませんね。

目次(「BOOK」データベースより)
永遠にかみ合わない議論、罵り合う人と人。その根底は「具体=わかりやすさ」の弊害と、「抽象=知性」の危機がある。「具体」と「抽象」、この動物にはない人間の知性を支える頭脳的活動を、ビジネスコンサルタント・細谷功が読み解く。さらに漫画家・一秒が、具体的言説と抽象的言説のズレを、各テーマに沿った四コマ漫画で描く。

具体と抽象

今回紹介するのは、2019年4月の会に私が紹介させていただいた「具体と抽象」(dZERO)です。ゆるめな表紙のイラストや、本の中に多数の4コママンガが掲載されているなど、一見すると軽いタイプの本のようにも見えますが、実際に書かれている内容はとんでもなく重要だという珍しいタイプの一冊です。

日常会話の中で、「具体的」「抽象的」という言葉はよく耳にすると思いますが、その「具体」と「抽象」の考え方についてマンガを交えながら紹介しています。多くの人がなんとなくは知っていながら、必ずしもきちんと理解しているとは言い難いこの概念について、極めて的確に言語化・視覚化しているのがこの本のすごいところだと言えるでしょう。

具体の世界と抽象の世界

そもそも、「抽象的」とはどのような意味の言葉なのでしょうか? 一般的には「はっきりしないもの」や「わかりにくいもの」に対して「抽象的」という言葉が使われやすいと思いますが、「抽象」という言葉をはっきりと説明できる人はそこまで多くないと思います。

この本の言葉を借りるなら、「抽象」という言葉の意味は『枝葉を切り捨てて幹を見ること』であり、『複数の事象の間に法則を見つける「パターン認識」』です。言い換えれば、「具体」とは1つ1つの物事を別々の事柄として捉える視点であり、「抽象」とはその中から何らかの繋がりや関係性を見出してまとめて考える視点です。

この本では、さまざまな例や図、マンガなどを通してそれを解説しているわけですが、その中で筆者が強調しているのは「具体」と「抽象」の視点の違いによるコミュニケーションギャップです。多くの人が他人と「噛み合わない会話」をした経験があると思いますが、そのコミュニケーションギャップは話している視点の「抽象度の違い」だと言うわけです。

個人的にはこのあたりの話はとても納得感が強く、サブタイトルにもあるように「世界の見え方が変わった」という感覚がありました。言葉や方程式などはまさにこの「抽象化」の産物なので、我々はそれを日常的に使っているわけですが、日常的すぎるがゆえにそれを意識することはあまり多くありません。だからこそ、自分が話していることや書いていることの「抽象度」のレベルを意識すること、そしてそのレベルを相手とのコミュニケーションの中で調整していくことの大事さを痛感しました。

具体と抽象の往復運動

この本のもう1つのトピックは「具体」と「抽象」の往復運動の重要性です。この本の前半の中ではどちらかというと「抽象」的思考の重要性を説いているわけですが、それは別に「具体」的な思考を否定しているわけではなく、そのバランスが重要だとしています。

「理念」や「ビジョン」などの抽象的な言葉は、全体の方向性を決めたり、新しいアイデアを創造したり、長期的な目標に向かっていくためには不可欠なものです。しかし、人間はそれだけで実際の行動をおこすことが難しいのは間違いありません。それらしいお題目はあるものの、まったく実態を伴っていないという状況を目の当たりにした経験がある方も多いでしょう。だからこそ、具体と抽象の往復運動が必要なのです。

個人的にこの本で面白かった例えが「マジックミラー」という表現。これは、「抽象の世界」が見えている人には「具体の世界」も見えているが、その逆は正ではないことを表したたとえです。要するに、「具体」と「抽象」の往復運動をするためには「抽象の世界」が見えていることが大前提だというわけです。

具体と抽象とは、「知性」とはなんなのか、それを知る上でこの本は大きなヒントになると思います。150ページ弱で図やマンガも多く、非常に読みやすい本なので、あらゆる方にオススメの一冊です。

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