[本紹介] FACTFULNESS

せっかく参加者の方々からベスト本を紹介していただいているので、参加者のイチ推し本をこの読書会のホームページでも紹介したいと思います。月に10冊以上読んだ中からのベスト本ということで、読み応え抜群の本ばかりです!

参加者の方から紹介いただいた本ではありますが、必ず私自身も一度読み、手元の書籍を参照しながら書いているので、内容の正確性についてもご心配なく。それでは見ていきましょう!

内容(「BOOK」データベースより)
ここ数十年間、わたしは何千もの人々に、貧困、人口、教育、エネルギーなど世界にまつわる数多くの質問をしてきた医学生、大学教授、科学者、企業の役員、ジャーナリスト、政治家―ほとんどみんなが間違えた。みんなが同じ勘違いをしている。本書は、事実に基づく世界の見方を教え、とんでもない勘違いを観察し、学んだことをまとめた一冊だ。

FACTFULNESS

今回紹介するのは、2019年4月の会の参加者に紹介いただいた本「FACTFULLNESS」です。2019年の発売の当初からかなり話題になっていた本だということもあり、すでに読んだことのある方も多いかも知れません。

内容としては「かつてより世界は良くなっている」という、一般的な認識とは異なる事実を統計データを元に明らかにしていくものです。紹介者のコメントとしては、「自分が思い込みで世の中を見ており、情報をアップデートすることの大事さがわかる」とのことでした。

先に書いた通り、この本に書かれているのは「世界は良くなっている」ということですが、筆者が本当に伝えたいのはその事実だけではないと私は考えます。この本において本当に重要な主張は『「FACTFULNESS=事実」に基づいた世界の見方をするべきだ』ということです。

事実に基づかないフェイクニュースや偏見に満ちたヘイトスピーチが世の中で蔓延る現代において、先入観や思い込みではなく事実やデータをしっかりと確認し、世界を正しく見る習慣はより重要になってくるでしょう。

バイアスが歪める事実

何が正しいのかわからない状況の中で重要になってくるのが、人間が陥りがちな各種のバイアス(偏見)や本能的な認識のエラーです。

著者は、一般に人が陥りがちな「世界をよりネガティブで極端に捉えてしまう」ことを「ドラマチックすぎる世界の見方」と呼んだ上で、その要因は決して「悪徳メディア」や「プロパガンダ」「フェイクニュース」「低質な情報」のせいではないと主張します。その要因こそが「脳の機能」です。

このような考えのもと、「世界は良くなっている」というテーマを(データに基づいて)解説しながら、人間が陥りやすい偏見を明らかにしていきます。詳細はぜひご自身で確認して欲しいですが、「ネガティブ本能」「パターン本能」「犯人捜し本能」など、おそらく多くの人にとって少なからず心当たりのある偏見が多く、読んでいてなかなか耳の痛くなってしまうかも知れません。ただ、だからこそ読む価値があると私は思います。

私が印象的だったのは、ある程度心理学やバイアスについての知識を(にわかながら)持っている自分自身でさえ世の中を「ありのままに」見ることが出来ていないということに気づくことができた点です。

知識として持っていることと、それを実践できているかどうかは全然別の話であり、世界を正しく見ることがいかに難しいかを痛感しました。

ユーモアの力

私がこの本の中で特に面白いと感じたのは、冒頭のクイズです。「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了しているでしょう?」「世界の人口のうち、極度の貧乏にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?」など、世界の見方についての13のクイズが出題されており、各国での正答率とチンパンジーの正解率を比較しています(笑)。

その結果、なんと、高学歴で国際問題に興味を持っている人たちですら(ある一分野を除いて)チンパンジーより正答率が低いという衝撃的な事実がわかったのです!!

ここでは詳細を述べることは避けますが、こういったユーモアもこの本の魅力の一つだと考えます。堅苦しい議論になりがちな国際問題を柔らかく解きほぐしてくれるという意味でも特筆すべき一冊であると言えるでしょう。本の分厚さに圧倒されるかも知れませんが、文字間隔は広めで図表なども多く、文体も読みすいのです。

特に、ここのところSNSやネットニュースでのフェイクニュースには目に余るものがあるので、それに振り回されないためのしっかりした対策は誰にでも求められると思います。自分や自分にとって大切な人、社会を守る適切な判断をするためにも、万人にお勧めできる一冊です。

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